2006年04月11日

アスリートのためのトレーニング〜腹横筋〜

(このコラムは、山本さんの過去の記事をもとに作成しています。)

前回は股関節インナーマッスルとして深層外旋六筋群をご紹介しました。
今回は体幹部のインナーマッスルとして、腹横筋の鍛え方をご紹介していきましょう。

この筋肉はいわゆる「腹筋」の奥にあり、機能としては主に「腹を引っ込める」役割を担っています。
また前回、「仙腸関節の状態が、体軸を形成するためのポイントとなる」といった意味のことを言いましたが、腹横筋が収縮することにより、胸腰筋膜を介して仙腸関節を引き締めることができるのです。

また競技能力向上のためには「腹圧」の強さがポイントとなりますが、まさに腹横筋は腹圧を高めるためにもっとも重要となる筋肉だと言えるのです。
さらに呼吸筋として息を吐いたり、咳をしたりするときにも働きます。

なお通常の腹筋運動では腹横筋強化に効果がありません。
いわゆる腹筋運動は脊柱の曲げ伸ばしですが、腹横筋は脊柱と垂直方向に筋繊維が走っているからです。

では、どのような運動が腹横筋に有効となるのでしょうか?

1. 腹横筋エクササイズ 初級編
まずは腹式呼吸です。仰向けになって膝を立て、リラックスします。
そして両手を腹の上に置き、息を吸いながら腹をふくらませ、息を吐きながら腹を凹めます。
これを10〜15回繰り返してください。

つぎに四つんばいになり、同じように息を吸いながら腹をふくらませ、息を吐きながら腹を凹めます。
やはり10〜15回。
両方とも2〜3セット繰り返すようにしてください。

2. 腹横筋エクササイズ 中級編
次に中級編。まずは四つんばいの体勢を取ります。
このとき、手幅はやや広めになるようにしてください。
だいたい肩幅の2倍弱としましょう。
そして息を吐きながら右肩を下げ、身体を捻るように下に倒します。
このとき、腹を凹めながら身体を捻っていくようにします。
右肩が下まで下がったら、そこで息を吸い、腹をふくらませます。
そして今度は逆方向に身体を捻りながら(左肩を下げながら)息を吐き、腹を凹めていきます。
これを左右両方、合わせて10回繰り返しましょう。
3セットで充分です。

そしてもう一つ。
初級編でやったように仰向けになってリラックスし、腹の上に両手を置きます。
そして息を吐きながら腹を凹めます。
ここまでは同じですが、中級編ではここでアイソメトリクスを行います。
すなわち、「腹を凹めきったところで、さらに凹めるように力を入れつづけ」ます。
このとき、呼吸はゆっくりと息を吐きつづけていきます。
これを10秒。やはり3セットで充分。   

3. 腹横筋エクササイズ 上級編
最後に上級編です。
まずは仰向けになり、両手は身体の横、床に置いて安定させます。
その状態で膝を少しだけ曲げて、両足を垂直に持ち上げてください。
これがスタートポジションです。
そこから、両足をゆっくりと真横に倒して床に近づけて行きます。
このときに腰をあまり浮かさずに、足だけを倒すように心がけてください。
足と床の角度が20〜30度くらいになったところで、今度は逆方向に倒していきます。
この繰り返し。
両足でメトロノームのような動作を行うと言えば分かりやすいでしょうか。
一往復に10秒くらいかけ、ゆっくりとした動作でやることが重要です。
そして動作の間、ずっと「腹を凹ませたまま行う」ようにします。
呼吸は小刻みに、一気に吸ってはゆっくりと吐きつづけることを繰り返します。
10回できれば上出来ですが、最初はできるだけの回数を行い、3セットとします。

そしてもう一種目。
仰向けになって背骨を丸め、肩甲骨が少し浮いた状態にします。
クランチのトップポジションだと考えてください。
膝は立てて足を軽く床から浮かせ、手は腹の上に置きます。
この状態で、腹式呼吸をするようにします。
つまり腹直筋を収縮させたまま、息を吸いながら腹をふくらませ、吐きながら腹を凹ませます。
最初は手を腹の上に置いて呼吸とともに腹がふくれたり凹んだりすることを確認しながら行いますが、慣れてきたら手を頭の後ろに組んで行うようにしてみてください。   

これらのエクササイズを行うとともに、それと平行して通常のエクササイズでも「腹を凹ませて」行うようにしてみてください。
特にボールなどを使ったバランストレーニングでは高い効果を挙げてくれます。
最初は慣れないかもしれませんが、徐々に腹を凹ませて行ったほうが体軸を安定させやすいのに気が付いてくると思います。

武術を習ったことのある方なら、「丹田を意識せよ」ということを多かれ少なかれ言われているはずです。
これはすなわち「腹直筋の力を抜いて腹横筋を収縮させる」ことに他なりません。
この動作が無意識にできるようになれば、あなたの競技能力はワンランク、間違いなくアップすることでしょう。

体軸が安定して腹圧が高まり、スクワットのときにベルトをすると高重量が扱えるようになるような感じで、パワーアップ&パフォーマンスアップが実感できるはずです。

このテクニックはドローインと呼ばれ、欧米で最近になって提唱されるようになったものですが、日本では古来より存在していたものなのです。

巨人の桑田投手が古武術を勉強して野球に生かしたという話は知られるところですが、先人たちに学ぶところは、まだまだ数多くありそうですね。



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